第7話 二重人格

  陶芸家に限らず誰でも二面性を持っている。
明るい自分、暗い自分。派手な自分、地味な自分・・・等々。

  私の個展では花器を中心とした、どちらかと言うと土味を生かした
落ち着いた作品(炭化焼成)と、
食器を中心とした派手な作品(金、銀、赤、緑)を展示している。
お客さんによく「これって、一人の作家の作品ですか?」と言われる。
そうなのだ!まるで別人がグループ展を開いているかのごとしなのだ!

  自分でも時々「こんな展示の個展でいいのか?」と自問する時も
あるのだが、何回考えてもどちらも自分の表現したい事であり、
どちらもお客さんに見て欲しいのである。
ほとんどの作家は自分のスタイルを持っていて、
たとえば焼き〆の作家なら焼き〆作品が会場を埋める。
青磁の作家なら青磁の作品が会場を埋め尽くす。

  各々の作家は専門分野の手法をより専門にするべく日夜研鑚を
つんでいる。しかし、私の場合、焼き〆ばかりやっていると、
絵付けがしたくなってくるし、逆に絵付けばかりしていると
土味が恋しくなる。
こんな事では何ひとつ大成しないんじゃないかとそれはそれで不安にも
なったりするがどうしようもない。

  それぞれの自分がそれぞれの仕事をしたがっているのだ。

  またお客さんも渋い系と派手系に分かれていて、それぞれの
支持者になってくださっている。

  別にどちらかに無理にスタイルを決める必要は無い。
物を作る時に大事な事は自分に正直になる事だ。他人が何を言おうと、
自分の表現したい事を貫く事だ。これは物作りに限った事ではない。
自分にウソをついての行為はたとえ成功したとしても、どこか後味が悪い。

  今の私の作品は、まるで二重人格者のようであるが、本当の事を言うと
二重人格、三重人格が混ざり合っての、自分が本当の自分のような
気がする。

  年を重ねる事によって、また新たな自分を発見できれば、
それはそれで嬉しい事であるが今しばらくは二人の自分の好きに
させていただく事とします。

2000年3月5日
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