第48話  土と遊ぶ

正直に記すと、私は土と遊ぶと言うよりは、格闘して今までやってきた。

  自分の表現したい作品に仕上げるには、土という素材は実に
強敵であり、ちょっとした気のゆるみが、最終的に失敗を導く事が
あるのを、いやほど経験してきているからである。

  よく、「土と遊ぶ」・・・・というキャッチフレーズで展覧会が
開かれているが、個人的にはとてもそんな心境にはなれない。

  たかが陶芸、されど陶芸。残念ながら、まだ今現在、
私は土と遊んでいない。

  いくら自分が作りこんだ作品でも、最終的には窯の中で焼くわけで、
その部分に関しては火の神様にゆだねるしかない。
この一旦、自分の手を離れるという、陶芸独特の行程は、時には微笑み、
時にはしっぺ返しを食らうハメになり、なんとか成功率を上げるために、
あの手、この手とやってきた訳である。

  今、私は新たに磁器土の作品に取り組みだした。
磁器土は今まで使っていた信楽の土とはまったく違う性質を持っている。
性質というよりは、ここは人間にたとえて性格と言って良いかも知れない。

  信楽の土に比べて腰がなく、フニャフニャしていて、なんとも
コントロールがきかないのである。土と遊ぶというよりは、
土に遊ばれているって感じである。

  よく「土と遊べるようになれば本物だ」という事を耳にする。
確かにそういう心境にまで達したならそうであろうが、今の私には
残念ながら無理な注文って感じだ。

  遊びのある作品もあっていいし、いや、作品自体は遊びがあった方が
面白い。矛盾しているようだが私は遊びを前面に出している作品も
心がけているのだが、正直、心の底から土と遊んでない以上、
それは見る側にとって中途半端に映るかも知れない。

  だからと言って、私は「・・・ねばならない」的な考え方は
あまり好きではないのである

  土と遊べるようになれば本物だからと、無理に遊ぶ振りなど私には
できない。遊ばなければいけないという脅迫観念で作陶するのも
嫌であるし、HPで格好つけに「私は土と遊んでいます!」なんて
ウソを書く気もない。

  いつか・・・いつの日か本当に土と遊べる日が来る事を願って、
私は今日も土と格闘している。

  しかし、教室の生徒さんから見ると、私は毎日土と遊んでいるように
見えるらしい。ダハハハ!。

2003年9月17日
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